UAE(アラブ首長国連邦)ビジネス法務ガイド
※ 本ページは2026年7月31日時点の法令・公表情報に基づきます。法令・施行日・閾値は改正が頻繁なため、実行前に一次出典および専門家にご確認ください。

Photo: Emaar
UAEはオンショア(各首長国)とフリーゾーンの二元構造を持ち、さらにDIFC・ADGMという独自法域が重なります。2021年の会社法改正で本土でも外資100%が原則可能となり、2023年からは法人税9%が導入されました。以下の21の論点で、法体系から紛争解決までを順に解説します。
この国の論点(21)
法体系・商習慣
法体系・商習慣|ビジネス文化と交渉UAEのビジネス文化|商習慣・暦・交渉の進め方
UAEでは人口の約9割が外国人で、実務の現場は多国籍です。一方で、意思決定の進み方、関係構築の位置づけ、暦の扱いには現地固有の慣行があります。
関係構築と意思決定
初期段階での対面と信頼構築が重視され、書面での詰めはその後に進みます。決裁権者が組織図から読み取りにくい場合があり、実質的な意思決定者の所在が進行速度に影響します。
他方で、UAEは湾岸諸国のなかでは意思決定が速い部類です。政府系案件でも、方針が決まってからの実行速度は日本の感覚より速いことがあります。
暦と就業リズム
週末は土曜・日曜です(2022年に変更)。ラマダン期間中は就業時間が法定で短縮され、会食や商談の時間帯も大きく動きます。イスラム暦に基づく祝日は年により日付が変わるため、年間計画では固定日として扱えません。
言語と文書
実務の共通語は英語ですが、当局提出書類・裁判手続はアラビア語が原則です。委任状や定款は公証・領事認証を要することが多く、日本側での手続に一定の期間を要します。
- 週末は土曜・日曜(2022年に変更)
- ラマダン期間中は就業時間が法定で短縮される
- イスラム暦の祝日は年により日付が変わる
7カ国で比較する:中東の法体系
法体系・商習慣|マクロ経済と日本との関係UAEの経済と日本との関係|投資環境の前提
UAEは中東のビジネス・物流・金融のハブとして機能しており、日本企業にとっては進出先であると同時に資源調達先でもあります。進出先と調達先の双方で関わりを持つ構造です。
経済の位置づけ
石油収入への依存を下げる経済多角化が国家方針として進み、物流・金融・観光・先端産業への投資が続いています。AEDは対USDの固定相場で、為替変動リスクがドル建てに収斂する点は、他の新興国と比べた実務上の利点です。
日本との関係
UAEには中東で最多の日系拠点が集まり、在留邦人も湾岸諸国では最大規模です。資源面では、UAEは日本の主要な原油調達先のひとつとなっています。進出先としても調達先としても比重が高く、駐在員の実務法務の需要が継続的に生じる構造です。
具体的な人口・GDP・拠点数の数値は、出典と基準時点を揃えて別途掲載します。指標・年・換算方法により数値が変わるため、本ページでは順位や概数の断定を避けています。
- AEDは対USDの固定相場制
- 経済多角化政策の対象分野は優遇制度と連動する
- 統計値は指標・年・換算方法により変動する
7カ国で比較する:中東の法体系
外資規制
外資規制|外資規制の全体像UAEの外資規制|原則100%出資と例外の構造
UAEは2021年の会社法改正で、本土(オンショア)でも外資100%出資が原則として可能になりました。ただし全業種が対象ではなく、戦略的影響活動への該当性と首長国ごとの運用により結論が異なります。
原則の転換
従来、本土法人はUAE国民が51%以上を保有する必要がありましたが、連邦政令法32/2021(会社法)によりこの一律要件は撤廃されました。多くの業種で外国投資家が100%を保有でき、最低資本の要件も実質的に緩和されています。
この改正により、外資100%を目的としてフリーゾーンを選択する必然性は低下しました。他方でフリーゾーンには税務・通関上の扱いという別の要素があり、両者の比較は事業内容によります。
例外としての戦略的影響活動
安全保障や公益に関わる分野は「戦略的影響活動」として指定され、外資比率の上限やUAE国民の関与などの条件が課され得ます。対象分野は閣議決定で定められ、改正されます。
また、業種によっては連邦・首長国の所管当局による個別の免許が必要で、その免許要件のなかに実質的な資本要件が置かれていることがあります。会社法上100%可でも、業種免許で制約を受ける構造です。
首長国ごとの運用差
登記・免許は各首長国の経済開発局(ドバイはDET、アブダビはADDED)が所管します。同じ活動でも、必要書類・所要期間・追加承認の有無が首長国により異なります。
- 会社法上の資本規制と業種免許の要件は別建て
- 戦略的影響活動の指定は閣議決定で改正される
- 登記・免許の所管は首長国ごとに異なる
7カ国で比較する:外資規制・進出形態の7カ国比較
外資規制|制限業種・ネガティブリストUAEの制限業種|戦略的影響活動と業種別免許
UAEの外資規制は、単一の禁止業種リストではなく、戦略的影響活動の指定と業種別免許の要件という二層で構成されます。会社法上の資本規制と、業種免許上の要件は別建てです。
戦略的影響活動
安全保障・防衛、一定のエネルギー、通信、金融など、国家的な影響が大きい分野が指定対象です。指定されると、外資比率の上限、UAE国民役員の要件、所管当局の事前承認といった条件が課され得ます。対象と条件は閣議決定で定まり、改正されます。
業種別免許による実質規制
会社法上の資本規制が外れても、事業を行うには活動に応じた免許が必要です。金融、保険、医療、教育、人材派遣、旅行などは所管当局の免許を要し、その要件のなかに資本金額、責任者の資格、現地拠点の要件が含まれます。
免許要件は活動コードごとに定まるため、要件の確認は活動コード単位で行われます。
商業代理店との関係
UAE市場に商品を供給する形態を選ぶ場合、商業代理店法の適用範囲に入るかどうかが独立した論点になります。登録代理店を通す構造にすると、契約終了時の解約・補償の規律が働きます。詳細は代理店規制のページで扱います。
- 規制は戦略的影響活動の指定と業種別免許の二層
- 免許要件には資本金額・責任者の資格が含まれる場合がある
- 代理店を用いる形態には商業代理店法の規律が及ぶ
7カ国で比較する:外資規制・進出形態の7カ国比較
外資規制|進出形態の選択UAEの進出形態|オンショアとフリーゾーンの選び方
オンショアとフリーゾーンの主な違いは、本土市場への直接販売の可否にあります。顧客の所在と取引の形態が、選択の分岐点になります。
二元構造の実務的な意味
| オンショア | 本土市場に直接販売可。首長国の経済開発局が免許。会社法32/2021が適用 |
|---|---|
| 一般フリーゾーン | 各ゾーン当局が免許。関税・手続上の利点。本土直販には制約 |
| DIFC・ADGM | 金融特化。独自法体系と専属裁判所。本土法は原則不適用 |
フリーゾーンの利点と限界
フリーゾーンは100%外資、簡素な設立手続、関税上の扱いといった利点があります。一部のゾーンではバーチャルオフィスも認められます。他方で、本土市場への直接販売には制約があり、本土顧客との取引には現地代理店や本土支店を要する場合があります。
また、Emiratisation(自国民化)義務は現状フリーゾーンには及ばないとされていますが、段階的な拡大の動きがあります。
選択の順序
顧客が本土に所在する事業ではオンショア、輸出・再輸出・地域統括を中心とする事業ではフリーゾーンが選択されるのが一般的です。金融業についてはDIFC・ADGMが選択肢となります。免許の活動範囲は法域ごとに異なります。
- フリーゾーン法人は本土市場への直接販売に制約がある
- 一部のフリーゾーンではバーチャルオフィスが認められる
- Emiratisation義務は現状フリーゾーンには及ばない(段階拡大の動きあり)
7カ国で比較する:外資規制・進出形態の7カ国比較
現地法人の管理
現地法人の管理|会社形態の比較UAEの会社形態|LLC・支店・フリーゾーン法人
本土ではLLCが最も一般的な形態で、支店は本店の一部として扱われます。フリーゾーン法人は各ゾーン規則の適用を受けます。形態により責任範囲・税務・免許の取得方法が異なります。
主要な形態
| LLC(有限責任会社) | 本土で最も一般的。取引・雇用・賃借が可能。会社法32/2021が適用 |
|---|---|
| 支店 | 本店の一部として扱われ、独立の法人格を持たない。活動範囲に制限 |
| FZ法人 | 各ゾーン当局が登記。ゾーン規則が適用 |
| DIFC・ADGM法人 | 独自法体系。金融業を中心に選択される |
選択の視点
本土で継続的に事業を行う形態としてはLLCが用いられます。支店は独立の法人格を持たず、本店が責任を負う構造です。業種によっては支店形態でのみ免許が発給される場合があります。
会社法改正により最低資本の要件は実質的に緩和されましたが、業種免許の側で資本金額が要求される場合があります。
- 支店は独立の法人格を持たず本店が責任を負う
- 業種により選択できる形態が免許側から制約される
- 会社法上の一律の最低資本要件は実質的に緩和されている
7カ国で比較する:外資規制・進出形態の7カ国比較
現地法人の管理|設立手続と必要書類UAEの会社設立|手続の順序と必要書類
設立は活動コードの確定、商号予約、定款・委任状の認証、免許取得、登記という順序で進みます。各段階の要件は、前段で確定した活動コードに依存します。
手続の流れ
取得する活動コードにより、必要な免許と資本要件が定まります。続いて商号を予約し、定款と委任状を作成します。日本の親会社が株主となる場合、登記事項証明書・定款・取締役会議事録などに公証と領事認証が必要です。
その後、所管の経済開発局(ドバイはDET、アブダビはADDED)で免許を取得し、商業登記を行います。事務所賃貸借契約の登録が免許発給の前提となる場合があります。
日本側で必要となる手続
公証・領事認証は日本側で行う手続で、案件により所要期間が異なります。必要書類の範囲は会社形態と業種により変わります。
- 活動コードにより必要な免許と資本要件が定まる
- 日本の親会社書類には公証と領事認証を要する
- 事務所賃貸借契約の登録が免許発給の前提となる場合がある
7カ国で比較する:外資規制・進出形態の7カ国比較
現地法人の管理|ガバナンスと年次コンプライアンスUAEの現地法人管理|機関設計と年次義務
設立後の運営では、署名権限の登録と年次の更新手続が継続的な義務となります。免許の更新は、銀行口座・就労ビザ・取引の各方面に影響します。
機関設計と署名権限
LLCはマネージャーが業務執行を担い、権限範囲は定款と委任状で定めます。銀行手続や当局申請では、署名権限が登記情報と一致していることが前提となります。
年次義務
| 免許更新 | 毎年。取引・銀行口座・就労ビザに影響 |
|---|---|
| 会計監査 | 会社形態・業種により要否が異なる |
| 法人税申告 | 2023年導入。申告義務と移転価格文書の整備 |
| UBO登録 | 実質的支配者の届出・更新 |
親会社が関与する範囲
親会社側で管理の対象となるのは、現地マネージャーの権限範囲、資金移動の承認手続、年次義務の期限です。
- 署名権限は定款と委任状で定め、登記情報と対応する
- 免許更新は銀行口座・就労ビザ・取引に影響する
- 法人税の導入により申告と裏付け資料の整備が必要となった
7カ国で比較する:外資規制・進出形態の7カ国比較
労務管理
労務管理|雇用契約の基本UAEの雇用契約|全契約が有期に一本化された構造
UAEでは2021年の労働法改正により、民間部門の雇用契約が有期(fixed-term)に一本化されました。当初置かれていた3年の上限は撤廃され、更新は当事者の合意によります。
有期契約への一本化
連邦政令法33/2021により、民間部門の雇用契約は有期に統一されました。当初は契約期間に3年の上限が置かれていましたが、2022年連邦政令法14号によりこの上限は撤廃されています。更新は当事者の合意により、回数の制限はありません。
旧法下の無期契約には移行期間が設けられ、所定の事前通知を経て新法の枠組みへ切り替える必要がありました。
契約に定めるべき事項
| 契約期間 | 有期。上限の定めなし。更新は合意による |
|---|---|
| 試用期間 | 法定の上限内で設定。終了時の通知要件がある |
| 賃金 | WPS(賃金保護制度)を通じた支払が原則 |
| 競業避止 | 期間・地域・業務範囲の合理性が要件 |
旧法からの移行
2021年改正の前後で、契約期間の上限、解雇に関する規律、通知期間の定めが変わっています。旧法を前提とした契約条項は、現行法の規律と対応しない部分が生じます。
- 民間部門の雇用契約は有期に一本化されている
- 契約期間の3年上限は2022年連邦政令法14号により撤廃
- 競業避止は期間・地域・業務範囲の合理性が要件となる
7カ国で比較する:労務・自国民化の7カ国比較
労務管理|労働時間・休暇UAEの労働時間と休暇|法定の枠組み
労働時間・休暇は連邦労働法が一律に定めます。ラマダン期間中の就業時間短縮など、日本の労働法制にはない規律が含まれます。
労働時間
法定労働時間と休憩、時間外労働の割増率、深夜・休日労働の扱いが労働法に定められています。ラマダン期間中は就業時間が短縮されます。
休暇
年次有給休暇、病気休暇、産休などが法定されています。未消化分の扱いと退職時の清算方法については、法定の水準と契約の定めの関係が問題となります。
法定水準との関係
労働法の定める水準を下回る合意は無効となります。日本の就業規則を基礎とする場合、各条項がUAE労働法の法定水準を満たすかが問題となります。
- ラマダン期間中は就業時間が法定で短縮される
- 法定の水準を下回る合意は無効となる
- 未消化有給の退職時清算は法定と契約の関係が問題となる
7カ国で比較する:労務・自国民化の7カ国比較
労務管理|賃金・給与保護制度UAEの賃金|WPSと自国民の最低賃金
UAEには外国人労働者向けの一般的な最低賃金はありませんが、UAE国民については2026年1月から月額AED6,000の最低賃金が適用されます。賃金の支払はWPS(賃金保護制度)を通すのが原則です。
賃金保護制度(WPS)
賃金は当局の指定する電子送金システムを通じて支払われます。支払遅延は当局の監視対象となり、新規就労許可の停止などの措置の対象となり得ます。
UAE国民の最低賃金
民間部門で雇用するUAE国民については、月額AED6,000の最低賃金が2026年1月1日から適用されます。従来の学歴別(AED3,000/4,000/5,000)の区分は廃止され、一律の水準に統一されました。
既存のUAE国民従業員については、2026年6月30日までの給与調整が求められます。2026年7月1日以降、未調整の場合は自国民化比率への不算入や新規就労許可の停止といった措置の対象となります。
| 対象 | 民間部門で雇用するUAE国民 |
|---|---|
| 水準 | 月額AED6,000 |
| 適用開始 | 2026年1月1日 |
| 経過措置 | 既存従業員は2026年6月30日までに調整 |
外国人労働者
外国人労働者について一般的な法定最低賃金は設けられていません。ただし就労許可の発給要件や職種別の運用で実質的な水準が生じる場合があります。
- UAE国民の最低賃金は月額AED6,000(2026年1月1日適用)
- 既存従業員の給与調整期限は2026年6月30日
- 外国人労働者について一般的な法定最低賃金はない
7カ国で比較する:労務・自国民化の7カ国比較
労務管理|解雇・退職金UAEの解雇と退職金|通知・精算の実務
解雇の適法性は、法定事由への該当性と手続の履践の双方により判断されます。退職金(end-of-service gratuity)は勤続年数に応じて法定され、契約で法定を下回ることはできません。
解雇の類型と手続
労働法は、通知を要する解雇、即時解雇が認められる場合、労働者側からの離職の各類型を定めます。法定要件への該当性と通知期間の履践が判断の要素となります。
退職金
退職金は勤続年数に応じて算定されます。算定基礎となる賃金の範囲(基本給か総額か)は、契約の定めが問題となる論点です。
紛争処理
労働紛争はMoHREへの申立てを経て、解決しない場合に裁判所へ移行します。手続では、警告・面談・評価に関する書面の記録が判断の資料となります。
- 解雇は法定事由への該当性と手続の履践により判断される
- 退職金は勤続年数に応じて法定され、契約で下回れない
- 労働紛争はMoHREへの申立てを経て裁判所に移行する
7カ国で比較する:労務・自国民化の7カ国比較
労務管理|自国民化政策(Emiratisation)UAEのEmiratisation|比率目標と未達時の拠出金
従業員50名以上の企業には、熟練職におけるUAE国民比率を毎年2%引き上げる義務があります。未達の場合、ポジションごとに拠出金が課され、その額は年々上がります。
制度の枠組み
オンショア企業に対し、熟練職におけるUAE国民の雇用比率を段階的に引き上げることが求められます。近年は20〜49名規模の一部業種(金融、不動産、IT、医療等)にも対象が拡大しています。Nafis(連邦プログラム)が給与補助等でエミラティ雇用を支援し、MOHREが達成状況を監視します。
未達時の拠出金
未達ポジションごとに拠出金が課されます。2023年に月額AED6,000で開始され、毎年AED1,000ずつ引き上げられる設計です。2026年1月からは月額AED9,000、年額AED108,000となります。
| 対象 | オンショアの従業員50名以上(一部業種は20〜49名) |
|---|---|
| 目標 | 熟練職のエミラティ比率を毎年2%引上げ |
| 2026年の拠出金 | 月額AED9,000/年額AED108,000 |
| フリーゾーン | 現状は原則対象外(段階拡大の動きあり) |
対象範囲と手続
拠出金は未達ポジション数に応じて算定されます。フリーゾーンは現状対象外とされていますが、段階的な拡大の動きがあります。
- 対象は従業員50名以上(一部業種は20〜49名)
- 2026年の未達拠出金は月額AED9,000・年額AED108,000
- フリーゾーンは現状対象外(段階拡大の動きあり)
7カ国で比較する:労務・自国民化の7カ国比較
労務管理|ビザ・就労許可・社会保険UAEの就労許可|ビザと社会保険の実務
就労許可は雇用主に紐づいて発給され、許可上の雇用主と実際の勤務先の一致が前提となります。グループ内出向や兼務の形態では、この関係の整理が論点となります。
就労許可と居住ビザ
外国人の就労にはMoHREの就労許可と居住ビザが必要です。発給は雇用主に紐づくため、実際の指揮命令系統と許可上の雇用主の対応関係が問題となります。
一定額以上の不動産取得や特定の職種については、長期居住ビザ(ゴールデンビザ)の対象となり得ます。
社会保険
UAE国民およびGCC国民については社会保険制度の適用があります。外国人従業員については、退職金制度や任意の貯蓄制度が代替的な位置づけとなります。
駐在員の実務
日本の親会社との雇用関係を残す出向形態では、UAE側の就労許可上の雇用主との関係、社会保険の適用関係、日本側の課税関係がそれぞれ問題となります。
- 就労許可は雇用主に紐づいて発給される
- 社会保険はUAE国民およびGCC国民に適用される
- 一定の不動産取得は長期居住ビザの対象となり得る
7カ国で比較する:労務・自国民化の7カ国比較
競争法
競争法|競争法の枠組みと当局UAEの競争法|禁止行為と適用除外
UAEは2023年に競争法を刷新し、売上高基準の届出義務を導入しました。従来の市場シェア基準のみの制度から変わっている点に注意が必要です。
禁止される行為
競争制限的な合意(価格協定、市場分割、生産制限、談合等)と、支配的地位の濫用が禁止されます。域外で行われた取引であっても、UAE国内の市場に影響を及ぼす場合には適用され得ます。
当局と手続
所管当局が調査、是正措置、制裁を行います。違反には課徴金が科され、取引の私法上の効力にも影響し得ます。
情報交換の位置づけ
価格や数量に関する情報の交換は、明示の合意に至らない場合であっても競争制限行為として問題となり得ます。業界団体の会合を通じた情報共有もこれに含まれます。
- 国内市場に影響を及ぼす域外取引にも適用され得る
- 価格・数量の情報交換は合意なしでも問題となり得る
- 違反は制裁のほか取引の私法上の効力にも影響し得る
7カ国で比較する:競争法・企業結合の7カ国比較
競争法|企業結合規制UAEの企業結合規制|届出基準と手続
2023年の競争法改正で、市場シェア基準に加えて売上高基準が導入されました。これにより届出義務の対象範囲が拡大しています。
届出義務
一定の基準に該当する経済集中は、実行前の届出と当局の承認を要します。基準には市場シェアによるものと売上高によるものがあり、いずれかに該当すれば対象となります。
届出を怠って実行した場合、事前承認義務違反として罰金・是正措置の対象となり、取引の私法上の効力にも影響し得ます。
対象範囲と手続
届出の対象となる「経済集中」には、JVの設立や少数持分の取得であっても「支配」の取得に当たるものが含まれます。承認までの審査期間はクロージング日程に影響します。
- 2023年改正で市場シェア基準に加え売上高基準が導入された
- JV設立・少数持分取得でも「支配」取得なら対象となる
- 届出を怠った実行は事前承認義務違反となる
7カ国で比較する:競争法・企業結合の7カ国比較
債権管理・紛争解決
債権管理・紛争解決|債権管理と回収の実務UAEの債権回収|与信管理から回収までの設計
債権回収の可否は、契約条項、担保・保証の有無、相手方の資産の所在といった要素により左右されます。取引開始時の設計が回収段階の選択肢を規定します。
取引開始時の設計
契約段階で定められるのは、支払条件、遅延損害金、期限の利益喪失、担保・保証などです。小切手による支払は広く用いられていますが、法制度の変更により、不渡りに対する刑事的な取扱いは従前と異なっています。
回収の手段
交渉、支払督促に相当する簡易手続、訴訟、仲裁が手段となります。判決や仲裁判断を得ても、相手方の資産の所在と執行可能性により回収の結果は異なります。
時効
時効期間は契約類型ごとに異なります。期間の経過により請求権が行使できなくなります。
- 小切手の不渡りに対する刑事的取扱いは従前と異なる
- 執行可能性は相手方の資産の所在により左右される
- 時効期間は契約類型ごとに異なる
7カ国で比較する:紛争解決・債権回収の7カ国比較
債権管理・紛争解決|裁判制度UAEの裁判制度|連邦・首長国・フリーゾーンの三系統
UAEには連邦裁判所、首長国の裁判所、DIFC・ADGMの裁判所という複数の系統があります。いずれの系統で審理されるかは、事件の性質と当事者の合意により決まります。
裁判所の系統
| 連邦裁判所 | 連邦法に基づく事件。三審制 |
|---|---|
| 首長国裁判所 | ドバイ・ラスアルハイマ等は独自の裁判所系統を持つ |
| DIFC裁判所 | コモンロー系。英語で手続。当事者の合意により選択可 |
| ADGM裁判所 | 英国法を直接適用。英語で手続 |
手続と費用
本土の裁判手続はアラビア語で行われ、提出書類には翻訳を要します。裁判費用は請求額に応じた料率で算定され、上限が設けられています。連邦裁判所では最初のAED50万までが4%、超過部分が6%、上限はAED45,000です。ドバイ裁判所は別の料率体系をとります。
管轄の選択
DIFC・ADGMの裁判所は、当事者の合意により本土企業間の紛争でも選択できる場合があります。手続言語が英語である点が、本土の裁判所との相違点です。
- 本土の手続はアラビア語で行われ翻訳を要する
- 連邦裁判所の裁判費用は上限AED45,000
- DIFC・ADGM裁判所は合意により選択できる場合がある
7カ国で比較する:紛争解決・債権回収の7カ国比較
債権管理・紛争解決|仲裁とADRUAEの仲裁|連邦仲裁法と執行
UAEは連邦仲裁法(連邦法6号・2018年)を有し、ニューヨーク条約の締約国です。国際取引では仲裁が一般的な紛争解決手段となっています。
連邦仲裁法
2018年の連邦仲裁法により、仲裁合意の要件、仲裁廷の権限、仲裁判断の取消事由などが整備されました。UAEはニューヨーク条約の締約国であり、外国仲裁判断の承認・執行の枠組みがあります。
仲裁機関
ドバイ国際仲裁センター(DIAC)などの機関仲裁が利用されます。DIFC・ADGMを仲裁地とする選択肢もあり、その場合は各法域の仲裁法制が適用されます。
仲裁条項の要素
仲裁合意の署名権限は、取消・執行の段階で争点となる論点です。署名者に仲裁合意を締結する権限があったかが問題となります。仲裁条項では、準拠法、仲裁地、言語、仲裁人の数と選任方法が定められます。
- UAEはニューヨーク条約の締約国
- 仲裁合意の署名権限は取消・執行段階の争点となる
- DIFC・ADGMを仲裁地とする選択肢がある
7カ国で比較する:紛争解決・債権回収の7カ国比較
- 適用法域は本土・一般FZ・DIFC・ADGMの3系統に分かれる
- 外資比率と免許要件は活動コード単位で定まる
- 法人税は2023年、Emiratisationの拠出金は毎年改定される